何も言わなくても、こちらの気持ちを察して優しい言葉をかけ、行動する。
これを女性は「思いやり」と呼ぶ。
女性にとって「思いやり」は相手に対する「愛」である。
だから夫に対しても日頃から「思いやり」を発動する愛は、当然夫からも「思いやり」を期待する。
しかし残念なことに、男性脳にはこの機能が備わっていない。
標準装備ではなく、経験や学習によって手に入れるオプション機能だ。
したがって「思いやり」で夫の愛を図ろうとする妻は自滅する。
「愛と思いやり」は女性脳のそれと全く違っているので、女性にとっては「愛されていない」「思いやりがない」ように見える。
男性脳から発する言葉は、女性脳を傷つけ、不機嫌にさせ、悲しませる。
しかしその言動は男が男たる「ゆえん」なのだ。
正義感や冒険心などの男気や客観性の高さ、フェアな精神、科学技術の高い能力を発揮するために、必要不可欠な能力なのである。
男性脳は女性の方が望むようにはなれないし、もしも望み通りにしようと矯正すれば、これらの能力を失ってしまう。
矛盾するようだが妻たちが愛に飢えないためには、男性脳を理解し、その気の利かなさを許し、男性脳をそのまま愛するしかない。
男性脳の最大の特徴は、右脳と左脳の連携が悪いことにある。
右脳と左脳をつなぐ神経回路の束が、女性脳に比べて細いのが原因だ。
脳梁が細い男性脳は、目の前のことに頓着せず、目の前の人に動揺することなく普遍の仕事を成し遂げる。
だから、地の果てまで行くし、死ぬまで戦うし、フラのない行動を延々と積み上げて、巨大建設物を作るし、精密機械もつくる。
男性脳は「目の前のこと」のためでできていない。
だから女性の方から見れば、鈍感で、察しが悪く、思いやりがないように見えるのも、無理からぬことなのである。
つまり多くの妻が絶望する。
病気で寝込んでいる時の「俺のご飯はどうする?」の一言の、妻の気持ちに頓着していないのがゆえの単なる質問だ。
「ご飯を作る様子がないけど、今晩僕はどうすれば良いの?」と聞いているだけなのだ。
決してご飯も作らず寝ている妻を責めているわけではな。
だから「悪いけど今日は作れないので、コンビニで何か買って来て。ついでに冷たい飲み物、レトルトのお粥、アイスクリームを買ってきてくれたら嬉しいなぁ~」とお願いしてみよう。
この時のポイントは、夫が間違った物を買って来ても文句を言わないこと。
夫が「できなかったこと」ではなく「やってくれたことに」フォーカスして・・・。
「やっぱりあなたがいるって良いな。心強い」なんて言えば、次に妻が倒れた時に、夫自ら動いてくれるようになるはずだ。
男性脳の「思いやり」は、学習で身につけるものなので、時間をかけて、妻が夫に教えてあげようではないか。
出典:定年夫婦のトリセツ 黒川伊保子著
参考まで